コラム

プロフィール

今井亜希子

  • 東京医科歯科大学大学院 皮膚科学教室非常勤講師
  • 2001年 群馬大学医学部卒業
  • 医学博士
  • 皮膚科専門医

高山代表とともに東京医科歯科大学皮膚科フットケア外来の開設に携わる。以降、東京、神奈川を中心に多数の医療機関で足の診療にあたっており、 現在は東京医科歯科大学医学部附属病院のほか湘南藤沢徳洲会病院、湘南鎌倉総合病院、 鎌倉市内クリニックにてフットケア外来、足と靴の外来を担当。 足の爪変化・皮膚の角化と下肢機能の関係を検証する臨床研究活動も行なっている。


足から見た転倒予防に必要なこと

現在の日本は、歴史上に例のない超高齢社会を迎え、2030年には人口の3分の1が高齢者となるといわれています。健康寿命を伸ばすこと、介護が必要となる状態を予防することは、生き生きとした社会作りのために、たいへん重要な課題です。

高齢者が要介護状態になる原因の第3位である「転倒・骨折」に注目してみましょう。転倒はだれにでも起こりうる可能性があります。ちょっとした拍子に転んでしまっただけなのに、骨のもろい高齢者ではたやすく骨折し、長期の入院や療養が必要になってしまいます。また、幸い骨折をしなかった場合でも、転倒後には痛みや恐怖心から、長期的に活動量が減ってしまう「転倒後症候群」といわれる状態になりやすいのです。家に閉じこもり、体力が落ち、認知症が進行し、やがて寝たきりになる可能性もあります。

では、転倒を予防するためにはどうすればよいのでしょうか? 転倒を引き起こす要因として、歩いたり立ち上がったりする運動機能の状態は見逃せません。私たちは、以前行った研究で、爪の病気のために足の親指に痛みがある人は、年齢を問わず、バランス機能、下肢の筋力がともに悪化していることを明らかにしました。さらに、多くの患者さんを診察するうちに、タコやウオノメ・外反母趾・巻き爪などの足のトラブルは、ある特定の組み合わせで同時に起こりやすいこと、体の使い方や歩き方に特徴があり、膝や腰の痛みとも密接に関係があることがわかってきました。

このような状態を、私たちは「あしよわ症候群」と呼んでいます。つまり足の皮膚や爪の病変、またそれを作ってしまう体の状態を放っておくと、全身の運動機能の低下や老化、転倒、最悪の場合には寝たきりにもつながってしまう可能性があるのです。すべての人にとって、足をできるだけよい状態にしておくことが、年齢を重ねても元気で歩き、充実した毎日を過ごすために大切であるといえます。そのためには、まず自分の足の状態をよく知っておくこと、自分に合う靴の選び方、フットケアや運動を日々の生活に定着させることが重要だと考えています。

運動器の老化を示す「ロコモティブシンドローム」より前に、「あしよわ症候群」は始まっているかもしれません。あなたはあしよわではないですか?