コラム

プロフィール
大沼 幸江
- 足育研究会理事
- Nature’s walk株式会社 取締役
- ネイチャーズウォーク本店 統括マネージャー
- 全日本ノルディック・ウォーク連盟 公認指導員
19年間の雑誌社編集部・出版部勤務を経て、2008年フリーライター兼、ドイツ人整形外科靴マイスターKarsten Rieche主宰の「整形外科靴工房R・I・O」マネージャーに。2013年Rieche と共同で足と靴の専門技術を提供し技術者を育成するNature's walk株式会社を設立、同取締役就任。マイスターの通訳兼アシスタントとして、全国のコンフォートシューズ専門店、靴メーカー等の開発・技術指導に携わるほか、千葉市中央区の「ネイチャーズウォーク本店」を企画・統括マネージメント。2015年月刊デーリィマン誌において「足元からの健康管理」連載執筆中。
"歩き支えるための"高齢者(シニア世代)の靴選び(2021/05/28)
高齢者の定義は概ね65歳(国連では60歳)ということになりますが、まだまだ現役世代の60代を高齢者と呼ぶには少々抵抗があります。
特に最近は健康寿命という言葉も普及し自分の足で歩くことへの意識がシニア層でも高まっていると感じます。
では、私たち「健康靴」を販売する立場の技術者が、どのようにシニア層の靴選びをお手伝いするかというと、前期・後期高齢者など年齢でザックリ分けることもできるのですが、むしろ年齢に関係なく、踵から着地し、足の拇趾を中心とした前足部でけり出せる「あおり歩行」のできる"アクティブシニア"と足が上がらず「すり足歩行」になっている"フレイルシニア"どちらの歩き方をするのかを見極め靴を選ぶことにしています。
もちろん、正しいサイズの靴を選べていないために"すり足"になっている方もいますから、素足で歩く姿を拝見します。
ある程度歩ける方は【図1】①のローリングの強い靴と②の優しい角度の靴、どちらがより楽に歩けるか試します。
例えば、足裏や膝の痛みで、すり足歩行で来店された60代の方が、靴底に導かれるようにスムースに歩け「膝も楽」と言ってもらえます。
また、80代でもとてもお元気で「最近1万歩歩くと足が痛くなってきた」と健脚ならではのお悩みを訴える方もローリングの付いた靴で「これなら1万歩楽に歩けそう」と言ってくれたりします。
さすがに80代では底が丸すぎる①の靴はお勧めしませんが、写真②の「立位で安定した面が有り、つま先とヒールに優しいローリング」付きの靴であれば、歩行を楽にサポートしてくれるはず。
さらに、シニア層には「家の中の履物」を見直してもらいます。最近はケアシューブランドの「あゆみ」(徳武産業:足育研究会法人会員https://www.tokutake.co.jp/#section1)で甲がしっかり止められ歩いても脱げないスリッパタイプの室内履きがお手頃価格で色やサイズも豊富に有りお勧めです。
シニアの転倒骨折の原因は「家の中」が多く、外履きも大切ですが「体を支える道具」という発想であれば高齢になればなるほど室内履きが大切だと考えます。
さて、話をシニアの靴選びに戻すと、まずは適切なサイズの確認。実際に履いて立ってみて、幅がフィットして足先に少しゆとりがあるかチェックします。
そして靴底の確認をして下さい。横から見て、ローリングが強すぎないかどうか、シニアの場合は【図1】②〜③の靴底が良いと思います。
また、靴底を裏から見て下さい。基本的には接地面が多いほど安定の目安となります。最近はシニア向けをうたった商品でもヒールが高く足のウエスト(中間)部分が細身の靴【図2・A】も有るのでアッパーのデザインだけで選ばずに靴底の形も要チェックです。
シニアの靴選びは、履いてみただけではダメで、必ず立って確認、歩いて再確認、その後に購入すれば失敗なく選べると思います。
そして、もう一つ、足を支え安定させるインソール(フットベッド)の有無で靴の機能は大きく変わります。それは、次回「インソールの役割」でお話ししたいと思います。
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