コラム

プロフィール

今井亜希子

  • ひかり在宅クリニック(横浜市)
  • 2001年 群馬大学医学部卒業
  • 医学博士
  • 皮膚科専門医
  • 日本フットケア・足病医学会 評議員

在宅療養支援診療所に勤務し皮膚科訪問診療を行うほか、神奈川県内の病院で足と靴の外来を担当している。足爪の変化・皮膚の角化と運動機能との関係を検証する臨床研究活動も行なっている。


巻き爪の論文について解説します 2/2(2023/12/08)←NEW!!

脚の運動の変化や足の変形が、巻き爪の発生と関係していることがわかりました。

では、このことを実際に巻き爪に悩む方のケアや予防に、どのように生かせばよいでしょうか?

まず、足首が硬い人は、歩く時に足指の付け根あたりで体重移動が滞ってしまいやすく、その先の体重移動が少ないため、足指に加わる圧力が小さくなります。

また脚の筋力が弱い人も歩く時の踏み込みが弱くなり、足指が地面から受ける力が小さくなってしまいます。
これが母趾のトランペット型巻き爪の発生につながると考えられます。

そのため、このような方には関節の動きを改善し、筋力を向上する運動療法が有効だといえます。ストレッチや筋トレなどを行うことで、巻き爪の進行を遅らせたり、再発を防いだりすることができるかもしれません。

また正しい歩き方を身につけ、歩行量を増やすことも大切です。

これに対して、外反母趾がある人は、母趾が内側にねじれて(回内)着地するので、歩くときに母趾・爪の内側が強い力を受けることになります。

これがホチキス型の巻き爪の原因になると考えられます。

また外反母趾は扁平足などのアーチの崩れが伴っているので、第2⁻4足趾の変形なども持ち合わせていることが多く、他の指も巻き爪になりやすいようです。

このような方には、靴の形やサイズに気をつけて選ぶ、しっかり靴ひもを締めて履くなどの習慣を身に着けて、いつも足指が圧迫されないようにすることが有効です。

さらに変形が強い方では、インソールなどの装具を使って足の裏に加わる圧を調整すること、正しい歩行に近づけることも必要でしょう。

もちろん、運動療法も並行して行った方がよいことは、言うまでもありません。

いかがでしょうか。足の巻き爪のケア・予防には、爪そのものの治療やケアだけでなく、その方に合った運動療法やフットウエアが役立つことがわかっていただけたかと思います。足育研究会が行ってきたこの研究が、巻き爪に悩む人のケアや予防につながってくれれば、何よりうれしく思います。

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出典:
今井亜希子ほか, 足趾巻き爪の形成要因となり得る運動機能障害と足趾変形に関する解析,
日皮会誌:133(11), 2589-2597, 2023


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