コラム

プロフィール

高山かおる

  • 足育研究会 代表
  • 済生会川口総合病院皮膚科部長
  • 東京医科歯科大学大学院 皮膚科学教室特任講師
  • 医学博士
  • 皮膚科専門医
  • フットケア学会評議員
  • 日本トータルフットマネジメント協会理事
  • 接触皮膚炎・皮膚アレルギー学会評議員


「あしラブ」習慣について

「皮膚科の臨床」58(11)2016 巻頭言から抜粋(一部改変)

最近特に皮膚科の日常診療の中でスキンケアの重要性が強調され、様々な疾患に対して1FTUを守った外用方法や石鹸の種類や使用方法などの患者指導もしばしば時間を割いて行うようになっている。アレルギーマーチという考え方が確立してからなおのこと、経皮感作を成立させないための保湿の重要性も認知がひろがってきている。
しかし一方で、足のスキンケアとなると、医療者側も患者側も認知も不足している印象がある。たとえば糖尿病性壊疽で潰瘍加療をしているもう一方の傷のない側にある足には、汚れがめだち、白癬や胼胝などがあったとしても加療をしていないどころかきれいに洗ってもいないことがしばしばある。
また糖尿病性壊疽をなんとか治療して治癒にこぎつけたとしても、また同じような病変を作って再燃を繰り返すということも少なからず経験する。このことは糖尿病性壊疽の予防を困難にしている理由とも直結している。

そもそも胼胝や鶏眼、爪の病気、靴ずれにはなぜなるのだろうか?すぐ再発する理由はなんだろう?足の裏の角層はもともと分厚い角質、少ない毛包構造、薄い色素が特徴で他の部位のケラチンとは異なる。爪もまた弾力性のある硬いケラチンからなるという特徴がある。
胼胝や鶏眼のような角質増殖は外力に対して起こる防御反応と考えられるが、もともと分厚くできているものがさらにそのような変化をもたらすのはその部位に想定以上に負荷がかかるからといえる。酷使する、重い体重もあるかもしれないが、合わない靴、足を引きずるような歩き方が影響していると感じることは多い。
爪もまた外力には強いはずであるが、特に足の母趾の爪には巻き爪の変形が起こることがしばしばある。この理由は靴を履くことにより圧力がかる、母趾が回内変形するために横から押されやすくなること以外に、逆に母趾の踏み込みが弱いため、つまり母趾爪甲への力がかからないためにおこるタイプがある。ここでも靴や歩き方(足の使い方)が影響している。

外来診療の中で、胼胝や鶏眼は削り、巻き爪は矯正することできてもなかなか靴の影響や歩き方を説明し正すことは困難をきたす。日本人は特に靴に関しては美容的、ファッション的な意味合いでの選択が多く、機能を考えて選ぶ習慣がない。
足に靴をあわせるより、靴に足をあわせてしまう。またきれいに足を洗う、保湿をするという習慣や爪をスクエアに切るという習慣も欠落し、歯を磨く、手を洗うなどの習慣を教えてくれるような学校教育がない。講演などにいくと紐靴の履き方さえ初めて聞きましたという感想をいただく。
以上のような足をとりまく事情を考えると、足の病気の問題は足を大切にする必要性の認識が欠落している、つまり足をケアする習慣「あしラブ習慣(足を愛する習慣)」がないといえる。
この問題の解決にあたるため「あしラブ習慣」を持とうという啓発活動を足育研究会では始めている。「あしラブラシ」で爪の周りや指の周りまで洗うことを習慣づける。「あしラブ手帳」をつくって毎日足のケアが行えたかをチェックする。80歳で20本の歯を残すという目標は達せられつつあるようだが、足に関しても80歳になってもその機能を残すために足に対するスキンケアを広げることは必要であろう。
最近の話題で悪性黒色腫の発生部位が足底圧のかかりやすい部位であったという論文(1)がだされたが、この問題にしても普段から足をみる習慣や過剰な圧が部分的に及ばないようにすることで早く気が付く、予防できるという可能性もみえてくる。この機会にあしラブ習慣についてご一考いただきたい。



参考文献)
1) Minagawa A, Omodaka T, Okuyama R. Melanomas and Mechanical Stress Points on the Plantar Surface of the Foot. N Engl J Med. 16;374(24):2404-6. 2016